JLCPCBの基板設計/面付け仕様について
こんにちは、けんです。
先日、JLCPCBのPCBAサービスを利用して基板を100枚製造した記事を書きました。
この記事では触れませんでしたが、基板製造サービスを利用するうえで基板設計仕様に関する部分でやり取りや基板修正が発生したのでその内容をまとめておこうと思います。
目次
JLCPCBの基板設計仕様
JLCPCBの基板設計仕様は以下のリンクにあります。
色々記載がありますが、よっぽど特殊な基板か超高密度実装な基板でなければ気にする点はほとんどないのでは?と思います。
実際に自分が作る基板は部品を手はんだする可能性があったり、家に1608metricな部品の在庫が多いことから、部品詰め詰めで設計することはほとんどありません。
なので、設計仕様もほぼ気にしたことはありません。
一応以下の項目くらいは見ておいた方が良いですが。
Minimum clearance(ホールやパッド間の間隔)
Minimum trace width and spacing(配線幅と配線間隔)
JLCPCBの面付け仕様
PCBを作る際に複数の基板を並べて作ることでコストを下げることができます。
面付けとかパネライズとか集合基板とか呼ばれる方法です。
JLCPCBの場合は同一基板の面付けであれば追加費用は掛かりません。
面付け時の注意事項は先述の基板設計仕様の他に以下にも掲載されています。
面付けの方法としては以下の2種類があります。
V-CUT(Vカット)
面付け部分の両面にV字型に溝を入れることで簡単に手で基板分割できるようになる面付け方法です。
CAD上では以下のようにVカットラインを示すラインを基板外形レイヤーに線幅0.5mmで入れています。
ちなみにジャンプVカットはJLCPCBでは利用できませんので、基板端から反対側の基板端まで一直線にラインを入れる必要があります。
ジャンプVカットとは(P板.com)
実際の基板としては以下のようになります。
Vカットラインをアップにするとこんな感じです。
この溝が基板両面に作られているため、手で簡単に基板分割することができます。
分割後の基板端面は割ときれいではありますが、バリがあったり基材のガラス繊維(FR-4の場合)が出ていたりするので、なでるように触るとケガをする可能性があります。
とはいえ、JLCPCBのVカット端面はバリが少ないように感じます。
基板をケースに入れてしまう場合はそのままでも良いかもしれませんが、気になる場合はやすり掛けしましょう。
先述の通り基板はガラス繊維を含んでいるので、やすり掛けする際は必ず防塵マスクを使うようにしましょう。
基板をやすり掛けする際は100均で売ってるMDF板やホームセンターで売ってる合板に紙やすりを両面テープで貼り付けて使うと便利です。
私は60番の紙やすりを使っていますが、これだとちょっと粗すぎる感もあります。
逆に240番だとすぐに目詰まりしてしまったので、120番くらいがちょうどよいかもしれません。
mouse-bites(ミシン目)
面付け部分に小さい穴を並べることで、その部分で基板が割れるようにする面付け方法です。
CAD上ではφ0.6mmの穴を中心間隔0.9mmで6個並べて作りました。
実際の基板としては以下のようになります。
小さい穴が連続していることでその部分の基板強度が下がり分割ができる訳ですが、Vカットよりは強度があるため手で割るのは少し難しいと思います。
私は捨て基板部分をラジオペンチで掴んで割っています。
分割後の基板端面はかなりのバリが出ます。
こちらもやすり掛けにより整えることはできます。
やすり掛けせずケースに収める場合はミシン目を製品基板側に食い込ませて、分割後のバリが基板外形からはみ出さないようにするのが良いです。
その他の面付け方法
複数種類の基板を面付けする際にコストを抑えるために行う方法があります。
・スロット?
正式な名称は分かりませんが、外形レイヤーで複数の基板間を2~3mmくらいの幅の基板でブリッジする方法です。
こちらはElecrowで作った基板ですが、この方法でも異種面付け扱いにならないので使いました。
JLCPCBでどういう扱いになるかは不明です。
ニッパーなどでブリッジ部分を切断することで分割できます。
・名称不明
名前があるのかすら分かりませんが、複数種類の基板を面付けする際にVカットもミシン目もスロットも入れずにそのまま合体する方法です。
基板外形は面付け後の最外形のみになります。
この基板は7種類の基板を面付けしたものになります。
分割する際は基板の間の部分にPカッターで溝を入れたり、卓上丸のこで切断する必要があります。
特にPカッターを使った分割はメチャメチャ大変なうえにすぐに刃がダメになるので、よほどのことが無ければやらない方が良いです。
子基板間は0.5mmのレジストカットを追加して段差を作ることで、カッターの刃が滑らないように工夫してみた。爪ががっつり引っ掛かるくらいの段差にはなってるので、上手いこと機能するかも。 pic.twitter.com/ej73qSkE1w
— けん@すいラボ🍜博ふぇす(A-34) (@suilab_ken) March 22, 2017
PCBAを依頼する時は面付け方法に注意
基板の面付けはVカットかミシン目にしておくのが良いわけですが、JLCPCBでPCBAまで依頼することを考えているときは注意が必要です。
JLCPCBのPCBAはEconomicとStandardがあり、Economicはできることが少ない分安価になっています。
Economicの主な制限事項は以下です。
・部品実装できるのは表か裏の片側のみ(反対側は自分ではんだ付けする)
・数量は50枚まで
・面付けはmouse-bites(ミシン目)のみ
ということで、JLCPCBでVカット面付けをした基板でPCBAを行うにはStandardを選択する必要があります。
間違えてEconomicで注文した所、”自分でカットするか、mouse-bitesでの面付けに変更するか、キャンセルしてStandardで注文しなおすか選んでくれ”という問い合わせが来ました。
実際に発生したやり取り
ここからは私がJLCPCBの基板製造サービスを依頼したときに発生したやり取りを紹介します。
今回発注したのはすいラボのゲーミングタグ用の基板です。
それを2枚Vカットで面付けした基板を発注しました。
この基板はElecrowで製造実績があったのでそのまま発注してしまったのですが、JLCPCBから以下のような指摘が来ました。
要はVカットしやすくするため左右にエッジレールを追加してほしいということです。
エッジレールを追加すると基板サイズが大きくなってコストアップするので、極力最小限の追加となるようここでJLCPCBの基板仕様を確認しました(遅い)。
エッジレールの最小幅は3mmのようでしたが、JLCPCBのデフォルトは5mmのようだったので以下のように5mm幅のエッジレールを両サイドに追加してファイルを差し替えました。
すると今度はこういう形にしてくれとの指摘が。
中々アクロバティックな形状です。
どうしたものかと考えていたら、”この形に修正してよいか?”と追加で連絡が来たので了承しました。
要はVカットラインと平行な基板端面はある程度直線が無いとダメということのようです。
そう考えると両サイドに付けたエッジレールは不要だった気もします。
途中にアクロバティック形状があったことを考えると、サポート担当と製造エンジニア間でのやり取りに齟齬があったようにも思います。
まとめ
JLCPCBの基板設計/面付け仕様について自分の経験も交えてまとめました。
製造可能な基板の仕様はメーカーによって細かい部分で差があったりしますが、電子工作で使うような実装密度の低い基板であればそこまで気にすることは無いかと思っています。
2023年6月現在JLCPCBは10cm*10cm以内、数量5枚、発送方法OCS NEPを選択すると、500円掛からずにPCBが作れてしまいます。
これだけの安さで作れてしまうとなると、ユニバーサル基板で作る手間を考えたらPCB作っちゃった方が早いまでありますね。
ちなみに自分の場合は面付けも手動で設計していますが、KiCADの場合は面付けを支援してくれるKiKitというプラグインがあるようです。
面付けも慣れればそこまで手間では無いですし、凝った?面付けもできるので私は手動面付け押しですが、便利なプラグインがあるというのは心強いですね!
この記事を書いた人
-
熱しやすく冷めやすく、さらに完全に形から入るタイプ。
電気回路を勉強中のへっぽこ会社員。
好きなレトロゲーム
【FC】テニス、バルーンファイト、ドラゴンバスター、ボンバーマン
【SFC】スーパーマリオワールド、エキサイトステージ、ドラゴンクエストV、VI、ファイナルファンタジーVI
【GB】ラクロアンヒーローズ、モトクロスマニアクス、魔界塔士Sa・Ga
最近の記事
- 電子工作2024.07.05Aliexpressでの返品方法(2024年7月版)
- PC2023.09.18Premiere Proで日本語入力ON状態でもスペースキーで再生/停止する方法
- ジャンク修理2023.07.01表示がおかしくなったスイッチボット温湿度計を修理する!
- アクセサリー製作2023.06.29JLCPCBの基板設計/面付け仕様について